合格体験記
永井誉典

1.初めに

私は、現在外資系金融機関に勤務しております。
不動産鑑定とは無縁の仕事をしておりますが、以下、私が何故に不動産鑑定士2次試験(以下2次試験)に受験し、合格するまでに至ったかを順を追って書かせていただきます。


2.目的


私が、不動産鑑定士なる資格があることを知ったのは今から8年ほど前のことです。既に私は、当時では、まだ注目されていなかった証券化のビジネスにこの資格がきっと役立つであろうと自分自身で確信をしていました。当時、私は外資系信託銀行に勤務していたので、信託業務で証券化は金になると単純に考えていました。不動産を証券化するのには、適正な
価格を判断する不動産鑑定士が必要であり、それが、この資格を取得するきっかけになったのは事実です。


ところが、身内の恥をさらすようですが、実の母親が、大工をしていた知人の土地を借り、そこに建物を建ててトラブルになったのです。契約書が土地の賃貸借契約ではなく、使用貸借契約になっていました。知人に依頼して建てた建物も欠陥住宅でした。この事件を通じて、私は、不動産の賃貸や売買でトラブルになることのないよう、自分で判断ができるようになりたいと思うようになったのです。


不動産の賃貸や売買なら、宅地建物取引主任者で充分なようにも考えられますが、契約の当事者が不動産鑑定士なら、相手側も大きなトラブルを避けるため、むやみに変な物件を紹介して契約を交わさないだろうと考えたからです。


3.一度目の受験、そして挫折


8年前に不動産鑑定士を目指すことを決意してからは、仕事を続けながら土日に資格学校に通い、勉強に励む日々が続きました。答案練習や模試での成績はそこそこでしたが、本試験当日では、民法、経済が全然書けず、挙句のはてに行政法規で50点程度しか取れず、結局手ごたえを感じたのは鑑定理論だけでした。当然ながら、その年は不合格と相成りました。


その後は、仕事が忙しくなり、不動産鑑定士になるという情熱も冷めていましたが、毎年、本試験の日が近づくと気にはなっていました。
当時は、不合格から挫折感を味わい、心残りではありましたが、再受験するまでには至らなかったのです。


4.再受験の決意


さて、一度目の受験から8年後、世の中は不動産の証券化ビジネスが活気づいており、自分自身がその流れから完全に取り残されているという孤独感で一杯でした。そして、再受験して合格したいという思いを抑えきれず、家族と相談して、昨年の8月、退職を決意しました。


以前の失敗を繰り返さないためにも、まず、2次試験において50点程度しか得
点できなかった行政法規対策として、あえて宅地建物取引主任者試験(以下宅建)を受験することにしました。行政法規と民法の基本的内容を理解する上でメリットが多いと判断したからです。
9月から一ヶ月半かけて勉強した宅建は12月に一応合格することができました。

 

 

5.勉強方法

実際に2次試験の勉強を開始したのは、宅建の合格発表後でした。資格学校を利用し、1月いっぱいテキストの理解、2月から答案練習に入りました。
以下、科目毎に私が行った勉強方法・対策を書きます。ただし、勉強時間には個人差があると思うのであくまで参考として下さい。

@民法
宅建で基礎知識がついていたので、民法の勉強は比較的スムーズに入れました。
しかし論文試験である以上、宅建の択一レベルとは異なります。
そのため、私は、基本的な条文の立法趣旨定義・要件・効果を理解して暗記しました。また、よく出題される論証例はある程度暗記しました。過去問は5回ほどやりました。
この科目は苦手に感じていたので、毎日3時間ほどかけました。
民法のポイントは、どんなに難問が出ても、定義・要件・効果を書けば最低限の点数をくれるのではないかと思います。事実、私は本試験の第一問はそれと簡単な論証例くらいしかまともに論述できませんでしたから。

A行政法規
民法同様、宅建で重複する法律に関しては、基礎力がついていました。しかし、問われる部分が異なるので、一から勉強し直しました。この科目はテキストを一通り読み終えた後は、過去問をひたすら10回程度繰り返しました。
但し、昨年は試験内容に大幅な変更があり、追加された法規もあるので、その部分は資格学校のテキストに依存しました。
勉強時間に関しては、朝起きてからの1時間程度と夜就寝前の1時間を当てました。
ポイントは、5つの選択枝がそれぞれどこが○×なのか判断できる力をつけることだと思います。

B経済学
経済学部出身の私にとって、この科目の存在はラッキーでもありアンラッキーでもありました。なぜなら、試験問題が難問ばかりだと感じたからです。
そこで、テキストで基本的な理解を終えたあとは、ひたすらグラフと図を使って説明ができるように心がけました。過去問は一度解いただけです。
勉強時間は2時間程度です。
ポイントは、試験委員の気持ちになって、グラフと図だけはなるべく綺麗に書くようにしました。汚いグラフや図で点差がついては後悔することになりますから。
また、経済学の試験問題は毎年2問のうちどちらかは難問が出ると思うので、易しめの問題で取りこぼしをしないことです。また、試験委員対策も最低限必要かと思います。しかし、経済学は苦手にしている方が多いので、深入りの勉強は禁物です。私も資格学校を信じて勉強しました。

C会計学
好きな科目でした。この科目は、基本的な会計用語の定義と趣旨を理解して暗記しました。本試験でもそれ以上のことは問われても差がつかないと信じました。
あと、賛否両論ありますが、私は、難問が出題されたときの保険として、企業会計原則を必要な部分は暗記しました。過去問は何度も出題されている分野は必ず出来るようにしておきました。過去問は重要です。
勉強時間は1〜2時間程度です。
ポイントは、問われていることに取り合えずストレートに答えて、余計なことを書かないことです。また、最近の減損会計の導入により、金融商品に関わる会計基準も理解しておく必要があります。事実、昨年の第二問は有価証券のことが出題されました。

D鑑定理論
一番好きな科目でした。ご存知のように、この科目は配点が他の科目の2倍であり、最重要科目です。私は、12月に受験を決意してから、早速、不動産鑑定評価基準及び運用上の留意事項(以下基準)の暗記を開始しました。試験内容が大幅に変更になり、基準の暗記範囲は激増したため、なるべく早くから暗記を始める必要があると感じたからです。
暗記方法で悩む方も多いと思いますが、私はひたすら声を出して、必要なら紙に書いて暗記するという方法を取りました。
勉強時間は3〜5時間程度かけました。
ポイントは過去問を最大限活用して、基準のどの文章がどこで使われているか、他の章との関連性はどうか、など色々と考えながら勉強することです。基準の暗記を終えたある時点で、芋づる式に理解した内容が怒涛のごとく知識として溢れ出て来る感じをつかめるようになれば合格に近づけます。

 

6.結果


この度、2度目の受験で何とか2次試験に合格することが出来ました。私なりにこの試験を振り返ってみると、以下のことが言えます。
2次試験は論文試験ではありますが、少なくとも民法と会計学に関しては、論証例の展開や会計用語の説明を完璧に書けなくても、いわゆるキーワードさえ押さえていれば充分論文としては合格点がつくと思います。なぜなら、試験委員は2ヶ月弱の間に2000以上もの答案を採点するので、キーワードが書かれているかどうかが採点基準として重要だと考えられるからです。


また、鑑定理論に関しては、なるべく2枚目の最後まで論述するというテクニックも大切です。当然、多くの内容を書く必要があるので、その内容がポイントを得ていれば他の受験生に差をつけることが可能です。
あと、私が心がけたことは、2月以降なるべく毎日全部の科目を勉強できるようにしました。こうすることで、ある程度の不安を取り除くと同時に、勉強もはかどりました。

試験の手ごたえとしては、民法40点、行政法規75点、経済学40点、会計学70点、鑑定理論150点、といったところです。


7.今後の進路


折りしも、本試験真近になって国土交通省より試験制度改革の発表があり、私自身、今後どうするか迷いましたが、家族会議の結果、外資系金融機関に再就職すること
にしました。来年の試験制度改革以降、仕事を続けながら鑑定士になれる道を模索するつもりです。
以上、いろいろと書かせていただきましたが、あくまでの私の個人的意見として聞いていただけると幸いです。また、この執筆の機会を与えて下さった経済学の杜の茂木さんに大変感謝いたします。本当に有難うございました。


 以上

 



 

 



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